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日本一の歯科医師になれ!

[2026.06.17]

 

私の心の師匠の言葉である。彼は40歳の若さで佐藤・三木両首相の主治医であったという。

私が大学の5年生の頃、東京医科歯科大学の非常勤講師として、医療訴訟の講義をしてくれた。

 

講義最後の言葉にしびれて、彼の治療を見学したいと大山教授に直訴したところ、彼に直接電話をしてくれた。

そのおかげで週に1日、彼の診療の助手をさせてもらえることになった。

(新入社員歓迎の食事会で『現役教授に電話させるなんて、お前な一体何者なんだ⁉』言われましたが。)

当時65才の彼は1人1時間、1日7人、週5日きっちりと診療していた。

 

予約表には医師会のドン、武見太郎氏の再来を思わせるような有名な患者さん達。

ただし、やっている治療は医科歯科大学で研修医に教えるようなもので、けっして特殊な機械や手術を伴うものではなかった。

それを一切手抜きせず(なんという精神力!)時間内で確実にクリアしていった。

 

一番意外だったのは、患者さんをリラックスさせるために会話を重視していたこと。

彼のモットーである「患者さんがイスの上で遊び始めるまでは歯医者は手を出してはいけない。」という言葉通りであった。

患者さんを一人終えると狭い院長室に戻ってタバコを一服。そのときに心に残る話をしてくれた。

 

消毒をしっかりして加圧根充をしたときは、

「びっくりしてたな。後輩の砂田(根管治療の教授)に習ったんだ。今はこうやる方が成績が良いらしいからな。あんたたちは1時間じゃ終いまでできないだろう?」(いくつになっても勉強とは本当にすごいです。)

 

昔の首相の家族が帰ると「総理がいらっしゃると(交通規制で)近所の人が迷惑するので私の方がうかがってもよろしいですか?」と言ったんだよ。

そしたら本当に首相官邸に行ってもいいことになったんだ。

そんときは国会中継を見たぞ!答弁の最中に入れ歯が落っこちたらすぐ飛んでいかなきゃな。

任期も終わり頃にはとてもお疲れでね。

帰りに「靴がきつい、きつい」と言うからよく見たら、ズボンがはさまっているのにも気づかない程だったんだよ (歴史小説に出てきそうな話ですね。すごい!)

 

ドクターショッピングをしている患者さんが帰ると「儲けるだけが歯医者じゃねえだろう? 誰かが面倒見てやんなきゃいけない。」(あちこちの教授を渡り歩いているこの人は、後年私のところにも来ましたよ。)

 

超高級料亭の主人が帰ると 「さすがだな、金額言っても顔色一つ変えやしない。もっとふっかけてやりゃいいんだろうが俺にはできねえからな。」 (おっしゃる通りです。たいした実績がなくても銀座というだけで先生の倍以上請求する歯医者がゴロゴロいますよ。)

 

「武見さんは本心からインフォームドコンセントって思ってたわけじゃねえな。最初に来たとき、ポンと封筒を置いて『300万入っています。足りなくなったら言って下さい。』

治療を説明しようとすると『お任せします。』と目を閉じちまう。

ハワイへの医院旅行の話を聞きつけると『お小遣いです。』と大金を置いてっちまう。

口数少ない古風な人だったね。」 (武見太郎さんは世界医師会会長という立場だったからインフォームドコンセント宣言を採択しただけだったんですね。)

 

またあるときは「別にやってることがすごいわけじゃない。見ててわかるだろう?でも、こうなるまでが大変なんだ。そこを良っく見てろ!」(『天才とは努力し続ける才能:羽生善治』とは先生のことですよ。)

 

長くなりましたが、私がしびれた最後の講義での彼のメッセージです。

「あんたたちだって日本一の歯医者になれる。『この先生は若くて腕はまだまだなんだけど私の為に一生懸命治療をやっている姿は日本一だ』患者さんにそう思われる歯科医師に明日からなって下さい。私の言ってることが本当かどうか、確かめたかったらいつでも見にいらっしゃい。」

 

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